肺臓炎は肺組織の炎症で感染性と非感染性に分類されます。一般的に言われる肺炎は細菌感染による肺の炎症で、肺臓炎のなかでよくみられるタイプの肺疾患のひとつです。
肺臓炎は大気中のカビや薬品などの刺激性物質が肺胞*で炎症を引き起こすことで血管内への酸素の流入が阻害され、呼吸器系に異常がみられるようになります。
(*肺胞:肺の中にある小さな袋状のガス交換をする器官。肺胞の内部は空洞になっており、呼吸によって口や鼻から吸い込まれた空気は肺胞まで運ばれます。肺胞の外周は網の目のように毛細血管で覆われており、毛細血管の中を流れる赤血球に酸素を供給すると同時に、血液中から二酸化炭素を取り込み口や鼻から排出させる呼吸に必要な器官。)
肺臓炎で最も一般的な症状は息切れや乾いた咳、呼吸困難です。肺臓炎が検査で検出できなかった場合や放置された場合は、肺線維症といわれる肺に瘢痕が残る慢性の肺臓炎を引き起こし、重症のケースでは右心不全を誘発し、呼吸器不全さらには 死 に至ることもあります。肺臓炎の迅速な治療の開始と病気の重度を軽減するためには徴候と症状を知ることが重要です。
肺臓炎とは
肺臓炎は肺胞が刺激性物質により炎症を起こし、血液の供給が阻害されることで発症しますが、以下のものが要因として考えられています。
1. 感染症
- 細菌性感染症 (肺炎球菌や肺炎レンサ球菌)
- ウイルス性感染症 (インフルエンザウィルスやSARSコロナウイルス)
- その他の病原体 (カビ、菌類、寄生虫)
2. 非感染性の事象
- 飲食物や吐瀉物の肺への吸引または吸入
- 大気中の塵や煙の過度の吸入
3 . 免疫システムの異常やその他、特定の条件
- 全身性エリテマトーデス(SLE)(免疫機能が誤って体の正常な組織を攻撃してしまう自己免疫疾患)
- 未熟児、双子または栄養不良の子供
- 高齢者
- アルコール依存症の患者
- エイズ患者
- 糖尿病患者
- 長期間のステロイドの使用など
いくつかのケースでは肺臓炎はインフルエンザ、扁桃炎、麻疹、水痘、百日咳(ボルデテラ属細菌による伝染性の高い呼吸器疾患)による合併症として発症することもあります。
肺臓炎の徴候と症状
慢性肺臓炎には以下の徴候や症状がみられます。
- 咳
- 痰
- 高熱と悪寒
- 呼吸困難と息切れ
- 呼吸時の胸の鋭い痛み
- 肩または脇腹にかけての痛み
肺臓炎の診断
肺臓炎は徴候および症状に気づくことが重要で、呼吸器科医は聴診器を使って呼吸時の肺の音を聞きながら異常を調べます。肺臓炎と他の肺疾患を区別するためには、感染症をチェックするために血液検査、喀痰検査、RP 33テスト(33種類の呼吸器系の病原菌を包括的に調べる検査)や胸部レントゲンやコンピュータ断層撮影装置(CT)などの画像診断が必要となります。その他、肺機能検査や気管支鏡検査、肺生検などの精密検査が必要になるケースもあります。
肺臓炎の治療
肺臓炎の治療は症状、原因、重度によって決定されます。感染症によって肺臓炎が発症した場合は、感染の原因となる微生物への抗生物質が処方され、治療効果や結果をみるための経過観察は非常に重要です。その他の治療として、副腎皮質ステロイドの使用や対症療法があります。治療を終えても症状に進行がみられる場合には、さらに追加の検査が必要となります。
また、重度の呼吸困難や嚥下時の胸の痛みなどの症状がみられる65歳以上の高齢者は、特に注意が必要です。
肺臓炎の予防
肺臓炎の罹患リスクを最小限に抑える一番の方法は健康な身体を維持することです。健康状態は一人一人違うため、それぞれに合った予防対策が必要となりますが、汚染された空気、大気中の病原体、刺激物質のような肺臓炎の発症のリスクがあるものからの曝露はできるだけ避けて、花粉や防塵対策のマスクを着用しましょう。また、医師の相談が必要ですが、肺炎球菌ワクチンの予防接種も非常に有効です。また、肺臓炎は放置すると死に至る危険な病気のため、早期発見は症状の重症化と合併症の低下に大きく貢献します。