胃癌について知ることでリスクを減らす

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胃癌について知ることでリスクを減らす

胃癌はタイ人が罹患する10大癌の一つで、世界保健機構(GLOBOCAN)の報告によると世界で5番目に診断数が多く、3番目に致死率が高い癌です。胃癌は40歳以上の男性に多く発症しますが初期の段階では症状や徴候がないため、早めに異変に気付いて定期的な検診を受けることで罹患のリスクを減らすことが可能です。早期発見はQOLを向上させ完治率を高めます。

 

胃癌とは 

胃は上腹部の左側の肋骨下部の背面に位置する豆状の消化器官で、食物の消化やミネラル・栄養分の消化と吸収がおもな機能です。胃癌は癌細胞が粘膜と呼ばれる胃の一番内側の部分に形成された後に筋肉層を介して胃の外部に増殖する病気で、癌細胞は胃(悪性腺腫)、リンパ節、肝臓・脾臓・膵臓との隣接部位や近接組織の内側に形成されるなどタイプや部位が異なります。

 

胃癌の危険因子

現在、多くの研究者たちが胃癌の危険因子を報告しています。

1. ピロリ菌の感染

ピロリ菌の感染は胃癌のおもな原因と考えられ、特に胃の下部にできる癌に大きな関連があるとされています。長期に渡る感染は胃潰瘍とともに慢性の胃炎を引き起こし、胃壁内の正常な細胞が変化をして最終的に胃癌へと進行します。

2. 慢性胃炎

慢性胃炎や胃癌を発症させる原因として考えられる物質(発がん性物質)には次のものがあげられます。

  • 焦げたり、焼きすぎたりした食物に含まれる多環香料炭化水素(PAHs)
  • 使用済み調理オイルに含まれる極性化合物
  • アクリルアミド (揚げ物、焼き物、ロースト、加工食品を高温で調理した際に発生するデンプン状の化学物質)
  • 発酵や加工した肉、缶詰め、焦げた肉や塩分の高い食物に含まれるニトロサミン
  • 複素環アミン(HCAs)(高温で肉を調理した際に焦げた肉類から発生する化学物質)

3. 年齢

高齢になるほど、胃癌の罹患率は増加します。 

4. 性別

胃癌は女性よりも男性に多く発症します。

5. 喫煙と飲酒

喫煙と飲酒により胃癌の罹患率が大幅に上昇します。喫煙者の胃癌の罹患率は約2倍になります。

6.人種

白人と比べると日本人、中国人、韓国人といったアジア人で胃癌の罹患率が高くなっています。

7. 結合組織の癌(肉腫)またはGIST

胃腸間質腫瘍(GIST)は胃を含むあらゆる消化器官にみられる軟組織の肉腫ですが、その発症メカニズムはまだ報告されていません。

8. 胃癌の家族歴

両親、兄弟、子供など一親等の中に胃癌の罹患者がいる場合は、胃癌罹患者がいない家族と比べて70%の確率で胃癌の発症リスクが上昇します。

9. 血液型

血液型がA型の人は他の血液型よりも胃癌の発症のリスクが20%高くなります。

10. 胃の手術歴があると胃癌の罹患率が上昇します。

 

胃癌の徴候と症状

ほとんどの場合、胃がんは初期の段階では目立った症状や徴候は見られず、しばしば癌細胞が他の臓器に転移して進行したケースで見つかることが多いです。

胃癌が初期のステージでは次のような症状や徴候が見られます。

  • 食後の消化不良
  • 腹部の不快感および腹痛
  • 腸内ガスによるお腹の張り
  • 吐き気・胃のむかつき
  • 食欲減退
  • 体重の減少
  • 胸焼け

胃癌が進行した際には次のような症状や徴候が見られます。

  • 黒い便
  • 血便
  • 激しい胃の痛み
  • 吐血
  • 体重の減少
  • 黄疸、皮膚や白目の黄色の変色
  • 手で触って分かるような左鎖骨周辺のしこり
  • 腹水

 

gastric cancer

胃癌の診断方法

  • 全身の健康状態の確認、腹部の検査、鎖骨周辺のリンパ節の検査を含む病歴
  • 肝機能、腎機能検査を含む血液検査
  • バリウムを用いた二重造影法による胃・食道の検査
  • 胃・食道・十二指腸内視鏡検査(胃全体の粘膜の状態を直接観察することが可能で、組織検査により癌と思われる領域を調べることが可能です。胃癌診断の95%の検査に利用されている標準的な診断方法です。)
  • 内視鏡超音波検査 (EUS)(胃の表層の状態と胃癌の浸潤度を観察することができる有効な検査です。)
  • コンピューター画像診断(CT)(胃の病理診断結果との照合、隣接器官への転移、腹部のリンパ節への転移を観察するための画像診断。)
  • 他の臓器への転移がないかを調べるための胸部レントゲン、骨スキャン、PET-CTを含むその他の画像診断
  • 内視鏡検査時の組織検査、呼気テスト、便検査、血液検査によるピロリ菌検査

 

胃癌の治療方法

胃癌の治療法として一般的に用いられる治療は外科的手術、化学療法、放射線療法になりますが、癌のステージや重度、健康状態、患者さんの希望に合わせた治療が可能です。

胃癌は初期の段階では消化性潰瘍や胃炎のような症状が見られるため、それらの疾患と同様の治療が行われますが、2週間の治療過程で症状に改善が見られない場合や治療後、6~8週間後に再発が見られた場合は内視鏡検査のような精査が推奨されています。

胃癌と診断された場合には、癌の進行度合いによって治療方法が異なります。初期のステージでは癌細胞は胃壁の最上層の組織に限局されますが、近傍のリンパ節へ転移する可能性もあります。一方、転移が進んだ後期のステージでは身体の遠位の部位に癌細胞の転移が見られます。

胃癌の初期のステージ

早期の胃癌の治療は癌の病巣と隣接する正常な組織を切除をする手術が第一の選択肢で、癌の病巣に近く影響を受ける可能性があるリンパ節も切除します。また、手術後に化学療法で切除しきれなかった癌細胞を全滅させることもあります。

転移を含む後期のステージ

癌細胞がその他の部位に転移をした場合は、おもに化学療法が用いられ、放射線治療と組み合わせた治療が行われるケースもあります。進行した胃癌に胆管の閉塞のような合併症が見られる場合は、手術を行うこともあります。ステージが進んだ胃癌では癌細胞の他の臓器への転移、再発のリスクが高いため、病巣を切除するだけの外科的治療は推奨されません。また、定期的な経過観察が非常に重要です。再発が見られた場合には、さらに治療が必要となります。

胃癌の予防対策

胃癌の確実な予防法は確立されていませんが、生活習慣の改善は胃癌の罹患リスクの軽減に大きな役割を果たしています。予防には次のような生活習慣を送ることが推奨されています。

  • 果物や野菜の摂取量を増やすこと。毎回の食事では果物と野菜の摂取率は50%ずつが理想的で、緑黄色野菜や果物の摂取をお勧めします。
  • 焦げたもの、加工食品、油や塩分の多い食事を控えましょう。
  • 定期的な運動は胃癌の罹患リスクを軽減します。また、禁煙、飲酒量の制限をしましょう。
  • 40歳を超えたら健康診断で定期的に内視鏡検査を受けましょう。
  • 家族で胃癌の罹患者がいる場合は、内視鏡検査とピロリ菌検査を強くお勧めします。

 

胃癌は早期の段階で発見された場合では、完治の確立はかなり高くなります。しかし、症状や徴候に気付かず、癌細胞が身体の他の部位に転移し後期のステージで見つかることもよくあります。生活習慣の改善は胃癌の罹患率低下に重要で症状や徴候が見られなくても、定期な検診で異常を早めに調べましょう。


参照:

Visiting Prof. Dr. Thiravud Khuhaprema

バンコクワタノソット癌病院院長・腫瘍外科医

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