デング熱とは?
デング熱はデングウイルスを持ったネッタイシマカの蚊に刺されることによって発症します。この蚊は通常熱帯地域に生息しているのですが、最近の温暖化によって生息地域が北上し、今は台湾などでも時々流行します。近い将来日本にも上陸してくる可能性があります。
デング熱ウイルスを媒介する蚊の特性
このネッタイシマカは昼間明るいときに活動します。暗くなると休んでいます。昼間の蚊に注意することです。逆にマラリアを媒介する蚊は暗くなってくると活発化します。
また、ネッタイシマカは都市部や都市近郊の水溜まりが好きで、そこで子孫を増やします。
マラリアの蚊は清流を好み、森林地帯に住み着きます。ですからバンコクでマラリアに感染することはありません。マラリアは今ではミャンマー国境地帯に限られます。
都市部を好きなデング熱の蚊を駆除する方法は、家および家の周囲に水溜まりを作らないようにすることです。ネッタイシマカの遊走できる範囲はとても狭いので、自宅周囲の200メートル以内くらいに絶対水溜まりを作らせなかったら、自宅でデング熱に感染することはないということになります。近所での協力が必要になります。
尚、デング熱は人から人へ感染することは決してありません。
デング熱の症状と診断
デング熱は突然の発熱で発症します。発熱と体の痛み、頭痛などがあります。
インフルエンザやCOVID感染症は呼吸器感染なので、普通は喉の痛み、鼻水、咳などを伴います。ですから、発熱とともにこの様な風邪症状を伴っていたらデング熱は疑いません。
デング熱の潜伏期は1週間ほどあります。ですから、2日前に日本から来て発熱したとすると、決してデング熱ではありません。タイの島に旅行から帰ってきて数日してからデング熱を発症する症例にはよく遭遇します。
デング熱を発症したら、特徴的な病態が二つあります。一つは血小板がどんどん減っていくことです。個人差がありますが、危険な程度に減少したら体のどこからか出血してくることがあります。ですからたいていは入院して毎日血小板数をモニターします。
二つ目は血管の透過性が更新するという性質があります。体中の血管から水分が血管以外のところに染み出して行くのです。ですから脱水になりやすかったり、場合にはショックを起こす場合もあります。デング熱に罹るとたいていは気分が悪く、吐き気がしたりして全く食欲がありません。ですから簡単に脱水になって重症化しやすい状態になっています。ですからたいていは入院して水分を多めに点滴するわけです。
デング熱はたいてい発症から1週間で回復します。ですから1週間病とも言えます。
発症3日目で入院したら、入院期間は4、5日ということになります。
デング熱ウイルスの種類はどんなものがありますか?
デング熱ウイルスには4 種類の血清型があって、それぞれDEN1、DEN2、 DEN3、DEN4 と表記されます。1度感染するとそのウイルスには終生免疫ができますから、2度とそのウイルスには感染することはありません。ですからデング熱に4回感染したら、その人は決してデング熱には感染しない体となり、デング熱からの卒業です。
2回以上感染すると、重症化し、場合には死ぬ場合があるという情報が一般の人に出回っている様ですが、たいしたことはありません。前述したように入院して血小板と水分の補給に注意していたら、重症化することはありません。すべてのデング熱の感染を含めてタイでの死亡率は0.1%ほどです。インフルエンザと同じ程度で新型コロナよりはかなり低いはずです。周囲にインフルエンザで死亡した例を見聞きしないのと同じです。恐れる必要はありません。
デング熱の予防方法
昼間の蚊に注意し、家周囲の水溜まりを根絶する努力をしましょう。
そして、風症状も下痢などおなかの症状もなく、熱と体の痛み、頭痛、吐き気だけだとデング熱の可能性がありますから、高熱が2日以上続く場合は早めに医療機関を受診することを勧めます。